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「くるみ割り人形」に雪の場面がある理由

 先日行ったV&A美術館の「ディアギレフ展」で、ある版画の前に立ったとき、頭をがつ〜んと殴られたような衝撃を受けた。
 バレエ『くるみ割り人形』は、前半はお金持ちの家のクリスマス・パーティと、夜中に起きる、ネズミ軍とおもちゃの軍隊との戦争。後半はおとぎの国。前半はほとんど踊りがなく、後半はストーリーがない。だから失敗作といえば失敗作である。
 それはともかく、前半と後半の「つなぎ」が雪の場面で、雪の女王と雪の精たちが踊る。
 どうしてこの場面が挿入されているんだろう、と不思議に思う人はあまりいない。だってクリスマスで、外は雪が降っている。
 でも雪が降っているのはあくまで現実の世界で、おとぎの国には雪なんて降っていない。そこに行く途中で、どうして雪の国を通らなくてはならないのか。
 で、V&A美術館でみた版画は、その謎を解いてくれた。
 1875年にパリのテアトル・ド・ラ・ゲテ座で『月世界旅行』というバレエが初演された。音楽はオッフェンバック、最初の振付は最近話題のジュスタマンである。このバレエの中に「雪のバレエ」という場面があった。これが大受けに受けて、またたくまにヨーロッパ中に広がり、各地で上演された。もちろんロシアでも。
『くるみ割り人形』はそれを取り入れたのである。
 それが証拠に、その版画(ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場(いま「オペラ座の怪人」ロングラン中)のもの)をみると、ダンサーたちの衣装にポンポンがついている。現存する『くるみ割り人形』初演時の写真とそっくりである。
 どうしてディアギレフ展にこの版画が展示されていたかというと、「バレエ・リュス以前のバレエ」というセクションがあったからである。ここには、オペラ『悪魔のロベール』(19世紀で最もヒットしたオペラのひとつ)を描いた有名なドガの絵も展示されていた(なんとこの有名な絵もV&A所蔵だった)。
 このことは、どの研究書を読んでも、誰もまだ書いていない。この展覧会の企画者プリチャードの大発見である。

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